東方project レミリア・スカーレット編

「」・・園町 恋斗
           (そのまち れんと)
《》・・十六夜 咲夜
           (いざよい さくや)

「ふぁ〜〜……」

朝になって目が覚める
「もう朝か……あー……」
どうも朝に弱い俺はしばらくぼーっとしていた
「…っは!いかんいかん」
再び寝てしまいそうになるがなんとかこらえる
顔を洗い歯を磨き 仕事着に着替え
「…よし!」
気持ちを切り替え 今日もこの紅魔館の主を起こしに行く

コンコンコン

レミリアお嬢様ー、起きてますか?」
反応がない。どうやらまだ寝てるみたいだ
「失礼します。」
ドアを開ける
『すぅ……すぅ……』
少し大きめのベッドで寝ている彼女
この紅魔館の主であるレミリア・スカーレット
「お嬢様、朝ですよー」
『…ん……んー……』
何度も見ている寝顔  とても本人には言えないがものすごく可愛い
「……っと、見とれている場合じゃないな」
仕事中だということを思い出し 再びお嬢様を起こす
「お嬢様、朝ですよ。起きて頂けませんか?」
『んー…………』
どうやら呼びかけだけでは起きてくれそうにもない
「お嬢様ー、お嬢様ー、起きて下さーい」
軽く揺する  この方法で起こすのはあまり気が進まない
なぜなら

『……ん』
「うわっ!」
揺すっていた腕を捕まれ引き寄せられる
   そして
『……カプッ』
「ぎゃあぁぁぁーーー!!!」

首筋を噛まれるからだ
呼びかけだけで起きる時もある
が   そうでない時はこうして揺する
揺すって起こす時  たまにこうして首筋を噛まれるのが辛い

咲夜さんに噛まれた所の治療をしてもらいながら紅魔館で働く前の事を思い出す


散歩の途中 俺はあるものを見て足を止めた
「アルバイト募集してるのか。なになに、紅魔館ってところで住み込み1日3食付きかぁー。…やってみようかな?」
俺は早速紅魔館に電話して話を聞いてみた
面接は明日行うとのことで 俺は必要な物を揃え明日に備えた
そして翌日
里から離れていて 道中危険だという事もあり  十六夜 咲夜さんという方に迎えに来てもらった
面接は意外にもすぐに終わり  なんと採用された
勤務は明後日からだ
仕事着は支給されるそうなので予め用意しておく必要はないみたいだ

勤務当日
里から紅魔館まで案内してもらい  仕事の内容を大まかに説明されマニュアルを渡された
それから
《私のことは咲夜で構いませんよ》
と言われたので  流石に呼び捨ては失礼だと思い俺は咲夜さんと呼ぶようにした
日々咲夜さんに指導され  働き始めてから10日ぐらいたった日 咲夜さんに言われた
《あら、教えていませんでしたっけ?レミリアお嬢様とフランお嬢様は吸血鬼ですよ》
「……は?」
やけに子供っぽいお嬢様だと思ってた
本当にただの子供だと思っていたその子たちの正体はまさかの吸血鬼だった
しばらく固まっていた俺に咲夜さん
《心配しなくても大丈夫ですよ。普通にお話も出来ますし……でも…》
「…でも?」
《あなたは来てまだ日も浅いですから。寝起きとか、もしかしたら噛まれるかもしれませんね》
ふふっと咲夜さんは笑みを浮かべる
《なんて、冗談ですよ》
「あはは……」
サクッと殺られる日が来ないことを祈りながら今日もお仕事に励むのだった


《大丈夫ですか?》
「いてて…大丈夫ですよ。慣れ…はしませんけど、これでレミリアお嬢様が起きて下さるならそれでいいですから」
《まぁ、頼もしいですね》
治療が終わり朝食のお手伝いをする
咲夜さんは結構早起きで  俺がレミリアお嬢様を起こす時間にはもうある程度調理を済ませてある
準備が整ったので再びレミリアお嬢様を呼びに行く

コンコンコン

『誰?恋斗?』
「はい、朝食のご用意が出来ました」
『分かったわ  ありがとう。それと……』
「はい?何か?」
『今朝はごめんね…またやっちゃった……』
「気にしないで下さい。私は平気ですので」
『そ、そう?』
「はい。ではリビングでお待ちしております」
『うん、すぐに行くわ』

リビングに集まるメンバーは
咲夜さん  レミリアお嬢様  フランお嬢様
   それと
「あれ、パチュリー様は?」
パチュリー様は体調が悪いので部屋で寝ております》
『咲夜、恋斗 おはよう…』
まだ眠いのか 目を擦りながら降りてきた
【お姉様おはよー】
フランお嬢様は元気よく降りてくる
「おはようございます。フランお嬢様」
【あ、恋斗お兄ちゃん!おはよー♪】
挨拶をしながら抱きついてくる
「あはは、今日もお元気そうで」
【元気元気〜♪】
フランお嬢様に抱きつかれるのはレミリアお嬢様に首筋を噛まれる日よりかは多い
『むぅ……』
フランお嬢様に抱きつかれてる時
レミリアお嬢様は少し不機嫌で寂しそうな表情をする
《フランお嬢様、程々にして下さいね。さ、準備も終わりましたので頂きましょうか》
みんな席に着き朝食を摂る

食事の後はお昼まで紅魔館内の掃除だ
俺が来る前は精霊とかに手伝わせていたらしいが  ほとんど役に立たなかったらしい
今は咲夜さんと俺  2人だけで掃除している
掃除は午前中だけでは終わらない  なぜなら紅魔館が広すぎるからだ
咲夜さんの便利な能力については咲夜さん本人から聞いた
これだけ広いと時を止めて掃除したとしても相当苦労するだろう
俺が来てからはまぁなんとか1日で終わるようになったとか(咲夜さんは多分止めているであろう)


『んー…お昼までは暇ね。散歩にでも……恋斗は、誘ったら来てくれるかしら…』


あらかた掃除も終わり 部屋で休憩していると

コンコンコン

「はい?」
『私、だけど…』
レミリアお嬢様?どうかされましたか?」
ドアを開け 部屋に入れる
『あのさ、これから散歩に行こうと思うんだけど…恋斗も来る?』
恥じらいながら言うその姿はとても可愛らしい
『だめ…かな?』
とどめは上目遣いときた
「い…いえ、それでは予定を咲夜さんに聞いてきますので少しお待ちください」
『ん…』

10分後

「戻りました」
『ど、どうだったの?』
「大丈夫ですよ。散歩、行きましょうか」
『う、うん!ありがとう!』
よっぽど嬉しかったのか  とても幸せそうな笑顔だ
『日傘取ってくるね』
「はい。では門の前でお待ちしてますね」

5分後

『お待たせ』
「それでは行きましょうか」


特に会話もなくお互い歩く
『……』
(つい勢いで誘ってしまったけど、何を話せばいいのかしら?……誘ったのは私だし、私から何か話さなくちゃ!)
『えと、今日はいいお天気ね』
「ええ、そうですね」
『……』
「……」

(……なんか違う。もっとなんかあるでしょ私!えーと……)
『ウチでのお仕事はもう慣れた?』
「ある程度ならなんとかこなせますが、まだまだ咲夜さんのようにはいきません」
彼は苦笑する  咲夜のように仕事が出来ないのが恥ずかしいのか悔しいのか  そんな表情をしている
『べ、別にあなたが必要ないって言ってる訳じゃないのよ!』
私は恋斗の曇った表情を見たくなかった
レミリアお嬢様…ありがとうございます」
彼は笑顔でそう言った
私はいつからだろうか  恋斗の嬉しそうな  幸せそうな笑顔が好きになっていた
そしてその笑顔を私だけに向けてほしい
そう思うようになった
『ほ…ほら、行くわよ!//』
そんな事を考えてるうちに恥ずかしくなったので彼の手を取り歩き出す
「っ!//」
ちらっと振り返ってみると恋斗の顔は少し赤くなっていた
その後も話をしながら散歩を続けた

レミリアと恋斗は紅魔館に戻るまで手を繋いだままだったのは美鈴に指摘されるまで気づかなかったそうだ


午後の仕事も終わりあとは部屋で寝るだけだ
「ふぅー……あー、なんかまだドキドキしてるなぁ〜」
午前中の散歩の時 レミリアお嬢様から手を繋いできたときは驚いた
「余計な事考えてないで明日に備えるか…」


「ふぁ〜……さて今日も頑張りますか」
顔を洗い歯を磨いて仕事着に着替える
「よし!」
最後に気持ちを切り替え 今日もレミリアお嬢様を起こしに行く

コンコンコン

レミリアお嬢様ー」
反応がないということはまだ寝てますね
「失礼します。」
『すぅ……すぅ……』
寝顔がとても可愛い 夢の中で良いことがあったのか とても幸せそうな顔をしている
「あー、いかんいかん」
見とれている場合ではない
「お嬢様ー、朝ですよー」
『ん……』
呼びかけても起きそうにない
  ということは  
  覚悟して揺すってみる
「お嬢様、お嬢様、起きてくださーい」
『んー……』
「うわっ!」
やはり腕を掴まれ 噛まれるのを覚悟する
次の瞬間
『…ん』
「んっ!?」
痛みではなくとても柔らかい感触が伝わってくる
目を開けてみると
「!?」
レミリアお嬢様とキスしていた
少しして開放されると同時にレミリアお嬢様の目が覚める
『…え?恋…斗?』
お互いの顔の距離は数センチ
「お、おはようございます」
俺はいつもと変わらない表情を保ちつつ挨拶をする
『え?……えーーー!!』
「お、お嬢様?」
『えと……私、恋斗に何かした?』
「あは、あはは…」
俺は笑うしかなかった

 《あら、恋斗さん顔が赤いですね?熱でもあるのですか?》
「い…いえ、大丈夫です。元気ですよー」
《そうですか?無理はしないで下さいね》

料理を乗せた皿を運び終わると
【おに〜ちゃん!おはよ♪】
「おわぁ!」
後ろからフランお嬢様が抱きついてくる
「おはようございます、フランお嬢様」
【えへへ〜】
「あのー、スキンシップは構わないのですが、突然抱きつかれると私が支えきれなくてお怪我をされるかもしれないので注意して下さいね」
【はーい♪】
レミリアお嬢様が降りてきた
『あ……』
「お、おはようございます。レミリアお嬢様」
『う、うん。おはよ…』
少し前にあんな事があったばかりだ
お互いぎこちない挨拶をする
【んー?】

長い廊下を掃除中 俺はぼんやりしていた
【あ、恋斗お兄ちゃん】
通りかかったフランお嬢様に声をかけられた
「フランお嬢様、どうかされましたか?」
【お姉様と何かあった?朝様子がおかしかったから】
「いえ…何もありませんよ」
【そう?】
「はい」
【ならいいんだけど、それより今から遊ぼうよー】
「すみませんが今はお仕事中なので」
【ちょっとぐらいいいじゃん】
「今度時間が空いた時は遊びに行きますので」
フランお嬢様の頭を撫でる
【うにゅ〜〜♪】
頭を撫でるとフランお嬢様は幸せそうな顔をする
【んー、分かった。また今度にするね!】
そう言ってフランお嬢様は去っていった
「色々と考えても仕方ないよな……」
止まっていた手を動かし掃除に勤しんだ


昼食後 自分の部屋を掃除していると

コンコンコン

「はい?」
『恋斗……』
「レ、レミリアお嬢様?どうかされましたか?」
部屋へ入れる
『き、今日もさ、お散歩行かない?一応昨夜に許可を貰ったんだけど…』
「は、はい。喜んで」

お互い軽く準備を済ませ紅魔館を出る
少し歩いたところで
『ん…』
レミリアお嬢様が手を差し伸べてきた
『……』
顔を赤くして上目遣いでこちらを見てくる
俺は差し出された手を取る
『ふふっ♪』
手を取るとレミリアお嬢様は笑顔になる
お互い少し顔を赤くしながら歩いていく

しばらく歩いたところで
『少し疲れたわ。この辺で少し休憩しましょ』
「はい」

俺の隣にレミリアお嬢様が腰を下ろす
『……ねぇ』
「はい?」
『昨日さ……恋斗に別に必要ないって訳じゃないって私言ったわよね?』
「あの時はとても嬉しかったです」
『私にはさ、貴方が必要なの。だからこれからも私の側に居てちょうだい//』
「はい、今後ともよろしくお願いしますね」
レミリアお嬢様は顔を赤くしながら
『その…毎日仕事を頑張ってる恋斗にね…ご褒美があるの』
「何でしょう?」
『ちょっと…ね。目をつむって』
そう言われ目をつむる
次の瞬間
『んっ……』
「っ!?」
レミリアお嬢様にキスをされた
唇が触れる程度のキスだった
「え…えと、レミリアお嬢様?」
『私ね、あなたの事が好きなの!//』
「…え?」
『最初はさ、咲夜が連れてきた普通の人間としてしか見てなかったけど、一緒に生活しているうちに…話しているうちにだんだん気になってきて…気が付いたら好きになってた//』
レミリアお嬢様…」
俺も始めはなんとも思っていなかったが
話しているうちにレミリアお嬢様の事が気になっていた  レミリアお嬢様は俺の事なんて全く気にしてないと思っていたので このような展開になるなんて想像もしていなかった
告白される事なんて無いと
『…返事』
「へ?」
気が動転してしまい間抜けな声が出てしまった
『返事を聞かせてちょうだい』
俺はそっとレミリアお嬢様抱きしめる
「俺も…レミリアお嬢様が大好きです」
『ありがとう…』
レミリアお嬢様も俺を抱きしめてくれる
『これからもずっと側に居てね!』
「はい!」

レミリアお嬢様とお付き合いを始めてから少し経ったある日の朝

コンコンコン

レミリアお嬢様ー、朝ですよー」
やはり返事がない
「失礼しますね。お嬢様、朝ですよ」
『んー、もう朝?』
「そうですよ。起きてください」
『んー』
「お嬢様?」
『んーんー』
「…しょうがないですね」
付き合い始めてからの朝  レミリアお嬢様はおはようのキスを求めるようになった 
「…ん」
『ん…』
「おはようございます。お嬢様」
『えへへ、おはよ♪』
「ほら、起きてください。朝食に間に合いませんよ」
『ま、まだ!もう少しだけ…いい?』
上目遣いで見つめてくる
こうされるのが弱いと 多分レミリアお嬢様も分かってると思う
「…少しだけですよ?」
誘惑に負け 再び唇重ね合う


《遅いわねー。恋斗さんは何をやってるのかしら?》
いつもならもうとっくに来ているはずなんだが  降りてくる気配もない
《仕方ないですね…様子を見に行きますか》

コンコンコン

返事がない
レミリアお嬢様ー?…失礼します》
咲夜はドアを開ける
《いい加減起きて……》
「…あ」
『へっ!?』
レミリアと恋斗はキスの真っ最中だった
《あー……朝食は準備しておりますのでどうぞごゆっくり…》
ドアが静かに閉められる
「『………』」
『咲夜に…見られちゃったね』
「あはは……」
『まぁ……別にいいじゃない』
「そうですか?」
『私たち愛し合ってるんですもの。どうせ咲夜がみんなに言うと思うし、むしろこのままみんなに自慢しちゃいましょう!』
「で、ですよね!今更隠していても仕方ありませんし」
『うん!』
レミリアお嬢様が抱きついてくる
『これからも、この先もずっとあなたのことを愛しているわ』
「俺もですよ」
そしてお互いの愛を確かめるように唇を重ね合うのであった

東方project 藤原 妹紅 編

「」・・・園町 恋斗 
               (そのまち れんと)
『』・・・藤原 妹紅 
               (ふじわらの もこう)
《》・・・上白沢 慧音 
               (かみしらさわ けいね)

 ここは幻想郷 
 妖怪や幽霊、人間や精霊など様々な生命体が住む世界 
 けして平和とは言えないが そんな世界で人間の俺〈園町 恋斗〉は日々生活をしている 

 「今日も疲れた〜。帰って酒でも飲むかねぇ〜」 
いつも通り仕事を終え いつも通りの帰り道を歩く 
「もう12月かぁ〜。流石に寒いな」 どんな季節や天気でも 帰りは少し遠回りになるが竹林の近くを通っている

なぜわざわざ遠回りをしているかというと この竹林には彼女〈藤原 妹紅〉がいるからだ


しばらく前に竹林で道に迷ってしまった時

彼女に助けられた 道を案内される間色々と話しかけてみたが彼女は

『あぁ』とか『うん』とか『そうだな』とか つまらなさそうに返事をしていただけだった

その日の帰り 里の知り合いに

藤原 妹紅について聞いてみた……

話をまとめると彼女は人間で あの竹林に住んでいてなんと不老不死らしい

他にも話を聞いているうちに俺は自然と彼女に興味を持つようになった

助けられたあの日から 俺は仕事が休みの日には妹紅に会いに行くようになった

最初のうちは案の定迷い 妹紅に助けられてばかりで 会う度に『迷ったのか?』『なんだ、またお前か』『迷うの分かっててなんで来る?私の仕事を増やすなよ…』なんて言われてたな

何度も助けられ 少し怒られて そうして何度か話しているうち仲良くなった

今では冗談も言い合える仲だ


「…妹紅 今何してるんだろうなぁ」

帰って酒を飲もうと思った矢先 ふと思ってしまった 迷っていても仕方ないので 取り敢えず竹林にある一軒家 妹紅が住んでいる家に足を運んだ

何度も来た道

竹林で妹紅の家に行くぐらいなら迷わなくなった

家に着き ドアをノックする

コンコンコン

『はーい?』

「妹紅ー、恋斗だけどー?」

『おー恋斗か、今行くから待ってろ』

少しして妹紅が出てきた

『どうしたんだこんな時間に?』

「いやぁ〜…まぁ、特に用はないけど…」

『はぁ…用もないのにこんな所まで来るなんて物好きなやつだなぁ。 まぁせっかく来たんだし上がって 茶でも飲んでけよ』

「おう、すまんな」

『適当に座って待ってろ』

俺は居間に案内され 妹紅は台所へ向かう

何度も見たが、相変わらず部屋の中は殺風景だ

ちゃぶ台と座布団 それと時計…

物が少なすぎる

あらためて部屋を見ていると妹紅がお茶の入った湯のみを2つ持ってきた

『おい何だよ、人の部屋をジロジロ見やがって』

「いやね、相変わらず何もないなぁ〜なんて」

『べ、別にいいじゃんか// 色々あっても邪魔なだけだろ!面白くなくて悪かったな…』

そう言うと妹紅はしょんぼりする

冗談で言ったつもりが結構気にしていたのか 俺が思っていた反応とは違うので少し動揺する

「ほらあれだ!物が少ないと掃除とか整理が楽だからいいよな!」

しょんぼりしている妹紅を見ると心が痛んできたのでなんとか場を和ませようと言ったのだが

『…………(つーん)』

妹紅はそっぽを向き拗ねる

「あー……俺が悪かったよ、ごめんな妹紅」

『ふんっ!』

ご機嫌斜めな妹紅

彼女には悪いが そんな態度が可愛いと思ってしまった

「俺が悪かった!許してくれよ〜

ほら このとーり!」

俺は妹紅を拝むように手を合わせると

『ま…まぁ、そこまで言うなら許してあげてもいいけど…//』

何故か顔を赤くしてそう言った


その後お互い特に何も喋ることなく少々沈黙が続く  その沈黙を最初に破ったのは俺

「もう12月、今年も終わりだなぁ〜」

『ん、そうだな』

「…………あっ」

『どうした?』

「知り合いに聞いたんだけど、外の世界では12月の24日と25日はクリスマスって日で、家族や友達と一緒にパーティーをやるらしいんだ。ご飯やケーキを食べたり、プレゼントを渡したりするらしい」

『へぇー…』

妹紅はあまり興味なさそうに聞いている

「それで…さ、24日なんだけど…空いてる?」

『んー?特に予定は無いけど?』

「そ、そうか!……よかったらさ、俺たち2人でパーティーしないか?」

『えっ!?えと…別に…いいけど…//』

2人でというのを意識してか お互い顔が少し赤い

今までに何度か2人で食事したこともあるんだけどなぁ

「じ…じゃあ24日ここ、妹紅の家でいいか?」

『ん、いいよ』

「ありがとう! んじゃあそろそろ帰るわ」

『そ…そうか、それじゃ24日に…』

「おう!またな!」

12月の夜 寒さで震えるこの季節

たが俺は寒さを忘れるくらい嬉しさで満たされていた


『帰ったか……んー…料理ねー…レパートリー少ないからなぁー…。そうだ!慧音に教えてもらおう!料理ついでにケーキの作り方も聞いておこうかな?』

『あいつは…恋斗は…喜ぶかな?…って何考えてるんだろ///…っんもう寝よ寝よ!!』

妹紅は顔を真っ赤にしながら1人ブツブツ何かを呟いていた


そして翌日

妹紅は寺子屋にいる上白沢 慧音のところにやってきた

『おーい慧音ー、いるー?』

《あら妹紅いらっしゃい。どうしたの?》

『突然で悪いんだけどさ、洋食でなにかレシピ教えて欲しいんだけど…ほらレパートリー少ないから飽きちゃってねー』

《洋食?また突然ね〜。あ、もしかして誰かに作って上げるの?》

そう言い慧音はイタズラな笑みを浮かべる

『なっ!//えっ!?ちょっ!?』

《ほら〜少し前に知り合った人間がいるって話してたじゃない。…もしかしてその人に作ってあげるの?ん〜?》

『ち…ちーがーう!!も…もう慧音ったら何を言ってるの!!』

必死になって慧音に反論しているが妹紅の顔は真っ赤だ

《そういえば外の世界ではもうすぐクリスマスってやつだっけ?……そっかぁ〜妹紅にもついに恋心が芽生えたのね!》

『違うって言ってんだろー!!//』

反抗しようと妹紅は唸っている

そんな彼女を見ていた慧音が笑みを浮かべた後 真剣な顔になった

『な、なに?』

急に態度が変わった慧音に驚く妹紅

《私はあなたと長い付き合いですが、あなたとこんなにも仲のいい人間は見たことありません。妹紅はあまり気にした事はないと思いますが、人間の一生はあまりにも短い。そんな人間が不老不死のあなたと仲良くなり、普通に話しかけてくれるんですよ》

『ん……』

《一緒にいられる時間は短いですが、その時間を大切にしないと後悔しますよ》

『そう…だな』

《まぁ妹紅も初めての事だろうから素直に気持ちを伝えれないのは仕方ないでしょう。でも想いを言葉にしないと園町さんに気持ちは伝わりませんよ》

『うっ!…確かにこんな気持ちになるのは初めてだからうまく言葉に出来ないけど…』

モジモジしている妹紅に慧音は言った

《妹紅、正直に言いなさい。》

『な、なにを?』

《園町さんのこと、好きなの?》

『//えー!?あー…う〜〜//』

《往生際が悪いわね!はっきり言いなさい!!》

『おぉう!?んーー…………き』

《なに?聞こえない!》

『んあぁぁもう!!好きだよ!!///』

《よく言えました》

そう言うと慧音は優しく微笑んだ

《妹紅の気持ちもはっきりしたことだし、美味しく作れるようにお料理頑張りましょうね!》

『んー……』

《返事は?》

『……はい』

こうして妹紅は自分の中にある気持ちに素直になり それを慧音は優しく支えるのであった


そして数日が過ぎ

約束の12月24日を迎える

「ふぅ……今日…だな。なんか緊張してきたぞ」

なにかよからぬ事をするわけでもないのに何故か緊張していた

「しっかし寒いなぁ〜。ここにいてもしょうがないしさっさと行くか……妹紅は喜んでくれるかな?」

綺麗にラッピングされた包を抱え俺は緊張と寒さで震えながら妹紅の家へ向かった

歩くこと数十分 ようやく目的地に着いた

「やっと着いた…」

緊張を紛らわすために1度深呼吸をしドアをノックする

「妹紅ー、恋斗だけどー?」

『は…はーい、今開ける!』

しばらくしてドアが開かれ彼女が現れた


園町 恋斗が訪ねて来るまで妹紅は突然顔を真っ赤にしたり俯いたりとコロコロと表情変え居間と台所の間を行ったり来たりしている

『ん〜…ん〜……あいつ、早く来ないかな?あぁでもまだ心の準備が〜!っでもでも!早く来てもらわないと料理冷めちゃうし…なんか鼓動早くて落ち着かない………すき、か………っ〜〜〜!///』

あらためて意識したのか 妹紅の顔はもう既に真っ赤だ

落ち着く暇もなくドアをノックする音が聞こえる

「妹紅ー、恋斗だけどー?」

そう 彼が来たのだ

突然のノックに驚いたが1度深呼吸してなんとか心を落ち着かせる

『は…はーい、今開ける!』

ドアを開け 笑顔で彼を出迎える


「よ、よう…来たぞ」

『い、いらっしゃい。ここにいるのもなんだし、上がってよ』

「お、おう」

落ち着いて話そうと思っていたのに何やってんだ俺は?

居間に行くと 様々な料理がちゃぶ台に並んでいた

「…え?これ……お前1人で作ったのか!?」

まだ出来ていない料理を手伝う気だった俺は並べられている料理を見てしばらく固まっていた

その様子を見た妹紅は自慢げに

『どうだ!驚いただろ〜?』

「あ、あぁ……てっきりまだ出来てないかと思ったよ〜。これだけ作るの大変だったんじゃないか?」

『ま、まぁな!それよりさ、冷めないうちに食べようぜ!』

「…そうだな!」

『「頂きます!」』

「どれも美味しそうで迷うなぁー……よし、まずはこれから…」

色々あって迷ったが まずは唐揚げをつまむ

「はむっ…んぐんぐ…」

『ど……どう?』

妹紅は不安そうな顔でこちらを見ている

「うまい!!」

『!!ほ、ホントか!?』

瞬間 パァァと笑顔になる

「うん!美味しいよ!」

そんな彼女の笑顔を見ると俺も自然と笑顔になる

『よかった〜。頑張って作ったかいがあっよ!なっなっ!他のも食べてくれよ!』

「あはは、そんなに慌てなくても食ってやるから」

料理口にしながら俺は思った

今のこの状況 周りから俺たちはどんな風に見えてるのだろうか?……妹紅は今どんな気持ちなのかと

そんな事を考えながら食べているといつの間にか料理がなくなっていた

「結構な量あったのに意外と食べれるもんだなー」

『そうだなー。』

食後のお茶を飲んでいると妹紅が思い出したように言った

『あ…あのさ、ケーキあるんだけど…まだ食べれる?』

「おっ、ケーキも用意したんだ〜。食う食う」

『よかった。ちょっと待ってな』

そう言うと妹紅は冷蔵庫にあるケーキを持ってきた

『はい、お待たせ』

「おぉ〜」

出てきたのはシンプルな苺のホールケーキだ

切り分けたケーキを早速食べてみる

「……」

『ど…どう?』

「……美味しい!!」

『よ、よかった〜』

「いや、ホント美味しい。これどっかで買ってきたのか?」

『いやさ……実は私の手作りなんだ…///』

妹紅は顔を赤くしつつ微笑んだ

「っ!!」

俺はその笑顔にグッときてまった

「あ…あぁ、うまいよ」

高鳴る鼓動をなんとか落ち着かせようと取り敢えず言ってみたが全く落ち着かない

むしろ余計意識してしまった

何かほかに気を紛らわす物がないかと探そうとして ここに来る前に買ってきたプレゼントの事を思い出した

「そうだ! 妹紅、お前にプレゼントがあるんだ」

『…えっ?』

全く想像していなかったのか 妹紅はすごく驚いた顔をしている

「ほら、これ」

俺は 素っ気なくプレゼントを渡す

『…開けて、いい?』

「う、うん…」

ラッピングを丁寧に剥がし 中に入っていたものを出す

『こ……これ』

妹紅が取り出したのは赤い色のリボンだった

「ほら、頭に付けてるリボンなんだけど……今付けてるそれも似合ってるけどさ…たまには違う色もいいかな〜なんてね//」

しばらくリボンを見つめていた妹紅は瞳

に涙を浮かべていた

『…っ……っ……』

突然泣き出した彼女に驚く

「お、おい……」

『…ごめんね泣いちゃって……嫌って訳じゃなくてさ、すっっごく嬉しくて……ありがとぉ//』

泣いている妹紅にハンカチを渡して俺は言う

「……実はさ、プレゼントというか、サプライズはもう1個あってさ」

『……なに?』

涙をハンカチでぬぐいながら次の言葉を待つ

「俺は……園町 恋斗は、あなたのことが…藤原 妹紅のことが好きです。俺と…付き合ってくれませんか?」

『っ!?』

『……っばかぁ…ずりぃよ…なんで今言うんだよ……』

泣きじゃくる妹紅を優しく撫でる

「返事を……聞かせてくれないか?」

『…好き……私も恋斗が好き!!』

「ありがとう…」

『あっ』

そう言って俺は妹紅をぎゅっと抱きしめる

最初は驚いていたが少しして妹紅も抱きしめ返してくれる

「…なぁ」

『ん?』

しばらく抱きしめ合った後 俺はそっと彼女を離し

「キス…してもいいか?」

『えっ!?///んっ!!』

返事を聞く前に妹紅の唇に自分の唇を重ねる

『っ〜〜〜〜〜!!!///』

いきなりで驚いただろう彼女だが しだいに受け入れてくれる

「んっ……ふぅ…」

『…………ふぁ』

キスを終え お互い見つめ合う

『……本当に、私でいいの?』

「あぁ…」

『…ガサツな女だぞ?』

「あぁ…」

『色気なんてないぞ?』

「そんなの好きにならない理由にならないさ。俺は妹紅が好き……これだけじゃ足りない?」

『っ!!///いや…そんなことない……ありがと』

笑顔だった妹紅は何かを思い出したのか俯いてしまう

「ん?どうした?」

『……私、不老不死だから…だから…』

うまく言葉に出来ないのか 彼女は黙ってしまう

その言葉を聞いて 俺も彼女が不老不死であることを再認識する

しばらく考え 俺はこう言った

「確かにお前は不老不死だ。俺より長く生きるだろう…。でも俺は…一生お前を愛し、幸せにする!妹紅が退屈しない毎日を過ごせるようにしてやる!」

そして彼女を抱きしめる

『嬉しい…すっごい嬉しい!……がとぉ……ありがとぉ……っ…っ…』

彼女が落ち着くまで優しく頭を撫で続ける

しばらくすると妹紅も落ち着き 俺は

抱きしめていた彼女をゆっくりと離す

「もうこんな時間か……」

『あ……ほんとだ…』

「そろそろ…帰るわ」

『ん…』

「今日はありがとう!料理もケーキも美味しかったよ!」

『私の方こそ…リボンありがと!大切に使うね!!』

「それじゃあ、また明日…」

『う、うん!』

妹紅は背を向け帰ろうとする俺に声をかける

『な、なぁ!』

「ん?どうし…んっ!!」

振り返ったと同時に妹紅からキスをされた

「っ!!…なっ!」

『お休みなさいのキス!///』

妹紅は顔を赤くしながら笑みを浮かべる

「っ〜〜〜!!お、お休み!!」

照れ隠しに妹紅軽く抱きしめ 今度こそ帰る

帰り道 愛おしい彼女を絶対に幸せにすると 俺はそう心に誓うのであった