東方project 藤原 妹紅 編

「」・・・園町 恋斗 
               (そのまち れんと)
『』・・・藤原 妹紅 
               (ふじわらの もこう)
《》・・・上白沢 慧音 
               (かみしらさわ けいね)

 ここは幻想郷 
 妖怪や幽霊、人間や精霊など様々な生命体が住む世界 
 けして平和とは言えないが そんな世界で人間の俺〈園町 恋斗〉は日々生活をしている 

 「今日も疲れた〜。帰って酒でも飲むかねぇ〜」 
いつも通り仕事を終え いつも通りの帰り道を歩く 
「もう12月かぁ〜。流石に寒いな」 どんな季節や天気でも 帰りは少し遠回りになるが竹林の近くを通っている

なぜわざわざ遠回りをしているかというと この竹林には彼女〈藤原 妹紅〉がいるからだ


しばらく前に竹林で道に迷ってしまった時

彼女に助けられた 道を案内される間色々と話しかけてみたが彼女は

『あぁ』とか『うん』とか『そうだな』とか つまらなさそうに返事をしていただけだった

その日の帰り 里の知り合いに

藤原 妹紅について聞いてみた……

話をまとめると彼女は人間で あの竹林に住んでいてなんと不老不死らしい

他にも話を聞いているうちに俺は自然と彼女に興味を持つようになった

助けられたあの日から 俺は仕事が休みの日には妹紅に会いに行くようになった

最初のうちは案の定迷い 妹紅に助けられてばかりで 会う度に『迷ったのか?』『なんだ、またお前か』『迷うの分かっててなんで来る?私の仕事を増やすなよ…』なんて言われてたな

何度も助けられ 少し怒られて そうして何度か話しているうち仲良くなった

今では冗談も言い合える仲だ


「…妹紅 今何してるんだろうなぁ」

帰って酒を飲もうと思った矢先 ふと思ってしまった 迷っていても仕方ないので 取り敢えず竹林にある一軒家 妹紅が住んでいる家に足を運んだ

何度も来た道

竹林で妹紅の家に行くぐらいなら迷わなくなった

家に着き ドアをノックする

コンコンコン

『はーい?』

「妹紅ー、恋斗だけどー?」

『おー恋斗か、今行くから待ってろ』

少しして妹紅が出てきた

『どうしたんだこんな時間に?』

「いやぁ〜…まぁ、特に用はないけど…」

『はぁ…用もないのにこんな所まで来るなんて物好きなやつだなぁ。 まぁせっかく来たんだし上がって 茶でも飲んでけよ』

「おう、すまんな」

『適当に座って待ってろ』

俺は居間に案内され 妹紅は台所へ向かう

何度も見たが、相変わらず部屋の中は殺風景だ

ちゃぶ台と座布団 それと時計…

物が少なすぎる

あらためて部屋を見ていると妹紅がお茶の入った湯のみを2つ持ってきた

『おい何だよ、人の部屋をジロジロ見やがって』

「いやね、相変わらず何もないなぁ〜なんて」

『べ、別にいいじゃんか// 色々あっても邪魔なだけだろ!面白くなくて悪かったな…』

そう言うと妹紅はしょんぼりする

冗談で言ったつもりが結構気にしていたのか 俺が思っていた反応とは違うので少し動揺する

「ほらあれだ!物が少ないと掃除とか整理が楽だからいいよな!」

しょんぼりしている妹紅を見ると心が痛んできたのでなんとか場を和ませようと言ったのだが

『…………(つーん)』

妹紅はそっぽを向き拗ねる

「あー……俺が悪かったよ、ごめんな妹紅」

『ふんっ!』

ご機嫌斜めな妹紅

彼女には悪いが そんな態度が可愛いと思ってしまった

「俺が悪かった!許してくれよ〜

ほら このとーり!」

俺は妹紅を拝むように手を合わせると

『ま…まぁ、そこまで言うなら許してあげてもいいけど…//』

何故か顔を赤くしてそう言った


その後お互い特に何も喋ることなく少々沈黙が続く  その沈黙を最初に破ったのは俺

「もう12月、今年も終わりだなぁ〜」

『ん、そうだな』

「…………あっ」

『どうした?』

「知り合いに聞いたんだけど、外の世界では12月の24日と25日はクリスマスって日で、家族や友達と一緒にパーティーをやるらしいんだ。ご飯やケーキを食べたり、プレゼントを渡したりするらしい」

『へぇー…』

妹紅はあまり興味なさそうに聞いている

「それで…さ、24日なんだけど…空いてる?」

『んー?特に予定は無いけど?』

「そ、そうか!……よかったらさ、俺たち2人でパーティーしないか?」

『えっ!?えと…別に…いいけど…//』

2人でというのを意識してか お互い顔が少し赤い

今までに何度か2人で食事したこともあるんだけどなぁ

「じ…じゃあ24日ここ、妹紅の家でいいか?」

『ん、いいよ』

「ありがとう! んじゃあそろそろ帰るわ」

『そ…そうか、それじゃ24日に…』

「おう!またな!」

12月の夜 寒さで震えるこの季節

たが俺は寒さを忘れるくらい嬉しさで満たされていた


『帰ったか……んー…料理ねー…レパートリー少ないからなぁー…。そうだ!慧音に教えてもらおう!料理ついでにケーキの作り方も聞いておこうかな?』

『あいつは…恋斗は…喜ぶかな?…って何考えてるんだろ///…っんもう寝よ寝よ!!』

妹紅は顔を真っ赤にしながら1人ブツブツ何かを呟いていた


そして翌日

妹紅は寺子屋にいる上白沢 慧音のところにやってきた

『おーい慧音ー、いるー?』

《あら妹紅いらっしゃい。どうしたの?》

『突然で悪いんだけどさ、洋食でなにかレシピ教えて欲しいんだけど…ほらレパートリー少ないから飽きちゃってねー』

《洋食?また突然ね〜。あ、もしかして誰かに作って上げるの?》

そう言い慧音はイタズラな笑みを浮かべる

『なっ!//えっ!?ちょっ!?』

《ほら〜少し前に知り合った人間がいるって話してたじゃない。…もしかしてその人に作ってあげるの?ん〜?》

『ち…ちーがーう!!も…もう慧音ったら何を言ってるの!!』

必死になって慧音に反論しているが妹紅の顔は真っ赤だ

《そういえば外の世界ではもうすぐクリスマスってやつだっけ?……そっかぁ〜妹紅にもついに恋心が芽生えたのね!》

『違うって言ってんだろー!!//』

反抗しようと妹紅は唸っている

そんな彼女を見ていた慧音が笑みを浮かべた後 真剣な顔になった

『な、なに?』

急に態度が変わった慧音に驚く妹紅

《私はあなたと長い付き合いですが、あなたとこんなにも仲のいい人間は見たことありません。妹紅はあまり気にした事はないと思いますが、人間の一生はあまりにも短い。そんな人間が不老不死のあなたと仲良くなり、普通に話しかけてくれるんですよ》

『ん……』

《一緒にいられる時間は短いですが、その時間を大切にしないと後悔しますよ》

『そう…だな』

《まぁ妹紅も初めての事だろうから素直に気持ちを伝えれないのは仕方ないでしょう。でも想いを言葉にしないと園町さんに気持ちは伝わりませんよ》

『うっ!…確かにこんな気持ちになるのは初めてだからうまく言葉に出来ないけど…』

モジモジしている妹紅に慧音は言った

《妹紅、正直に言いなさい。》

『な、なにを?』

《園町さんのこと、好きなの?》

『//えー!?あー…う〜〜//』

《往生際が悪いわね!はっきり言いなさい!!》

『おぉう!?んーー…………き』

《なに?聞こえない!》

『んあぁぁもう!!好きだよ!!///』

《よく言えました》

そう言うと慧音は優しく微笑んだ

《妹紅の気持ちもはっきりしたことだし、美味しく作れるようにお料理頑張りましょうね!》

『んー……』

《返事は?》

『……はい』

こうして妹紅は自分の中にある気持ちに素直になり それを慧音は優しく支えるのであった


そして数日が過ぎ

約束の12月24日を迎える

「ふぅ……今日…だな。なんか緊張してきたぞ」

なにかよからぬ事をするわけでもないのに何故か緊張していた

「しっかし寒いなぁ〜。ここにいてもしょうがないしさっさと行くか……妹紅は喜んでくれるかな?」

綺麗にラッピングされた包を抱え俺は緊張と寒さで震えながら妹紅の家へ向かった

歩くこと数十分 ようやく目的地に着いた

「やっと着いた…」

緊張を紛らわすために1度深呼吸をしドアをノックする

「妹紅ー、恋斗だけどー?」

『は…はーい、今開ける!』

しばらくしてドアが開かれ彼女が現れた


園町 恋斗が訪ねて来るまで妹紅は突然顔を真っ赤にしたり俯いたりとコロコロと表情変え居間と台所の間を行ったり来たりしている

『ん〜…ん〜……あいつ、早く来ないかな?あぁでもまだ心の準備が〜!っでもでも!早く来てもらわないと料理冷めちゃうし…なんか鼓動早くて落ち着かない………すき、か………っ〜〜〜!///』

あらためて意識したのか 妹紅の顔はもう既に真っ赤だ

落ち着く暇もなくドアをノックする音が聞こえる

「妹紅ー、恋斗だけどー?」

そう 彼が来たのだ

突然のノックに驚いたが1度深呼吸してなんとか心を落ち着かせる

『は…はーい、今開ける!』

ドアを開け 笑顔で彼を出迎える


「よ、よう…来たぞ」

『い、いらっしゃい。ここにいるのもなんだし、上がってよ』

「お、おう」

落ち着いて話そうと思っていたのに何やってんだ俺は?

居間に行くと 様々な料理がちゃぶ台に並んでいた

「…え?これ……お前1人で作ったのか!?」

まだ出来ていない料理を手伝う気だった俺は並べられている料理を見てしばらく固まっていた

その様子を見た妹紅は自慢げに

『どうだ!驚いただろ〜?』

「あ、あぁ……てっきりまだ出来てないかと思ったよ〜。これだけ作るの大変だったんじゃないか?」

『ま、まぁな!それよりさ、冷めないうちに食べようぜ!』

「…そうだな!」

『「頂きます!」』

「どれも美味しそうで迷うなぁー……よし、まずはこれから…」

色々あって迷ったが まずは唐揚げをつまむ

「はむっ…んぐんぐ…」

『ど……どう?』

妹紅は不安そうな顔でこちらを見ている

「うまい!!」

『!!ほ、ホントか!?』

瞬間 パァァと笑顔になる

「うん!美味しいよ!」

そんな彼女の笑顔を見ると俺も自然と笑顔になる

『よかった〜。頑張って作ったかいがあっよ!なっなっ!他のも食べてくれよ!』

「あはは、そんなに慌てなくても食ってやるから」

料理口にしながら俺は思った

今のこの状況 周りから俺たちはどんな風に見えてるのだろうか?……妹紅は今どんな気持ちなのかと

そんな事を考えながら食べているといつの間にか料理がなくなっていた

「結構な量あったのに意外と食べれるもんだなー」

『そうだなー。』

食後のお茶を飲んでいると妹紅が思い出したように言った

『あ…あのさ、ケーキあるんだけど…まだ食べれる?』

「おっ、ケーキも用意したんだ〜。食う食う」

『よかった。ちょっと待ってな』

そう言うと妹紅は冷蔵庫にあるケーキを持ってきた

『はい、お待たせ』

「おぉ〜」

出てきたのはシンプルな苺のホールケーキだ

切り分けたケーキを早速食べてみる

「……」

『ど…どう?』

「……美味しい!!」

『よ、よかった〜』

「いや、ホント美味しい。これどっかで買ってきたのか?」

『いやさ……実は私の手作りなんだ…///』

妹紅は顔を赤くしつつ微笑んだ

「っ!!」

俺はその笑顔にグッときてまった

「あ…あぁ、うまいよ」

高鳴る鼓動をなんとか落ち着かせようと取り敢えず言ってみたが全く落ち着かない

むしろ余計意識してしまった

何かほかに気を紛らわす物がないかと探そうとして ここに来る前に買ってきたプレゼントの事を思い出した

「そうだ! 妹紅、お前にプレゼントがあるんだ」

『…えっ?』

全く想像していなかったのか 妹紅はすごく驚いた顔をしている

「ほら、これ」

俺は 素っ気なくプレゼントを渡す

『…開けて、いい?』

「う、うん…」

ラッピングを丁寧に剥がし 中に入っていたものを出す

『こ……これ』

妹紅が取り出したのは赤い色のリボンだった

「ほら、頭に付けてるリボンなんだけど……今付けてるそれも似合ってるけどさ…たまには違う色もいいかな〜なんてね//」

しばらくリボンを見つめていた妹紅は瞳

に涙を浮かべていた

『…っ……っ……』

突然泣き出した彼女に驚く

「お、おい……」

『…ごめんね泣いちゃって……嫌って訳じゃなくてさ、すっっごく嬉しくて……ありがとぉ//』

泣いている妹紅にハンカチを渡して俺は言う

「……実はさ、プレゼントというか、サプライズはもう1個あってさ」

『……なに?』

涙をハンカチでぬぐいながら次の言葉を待つ

「俺は……園町 恋斗は、あなたのことが…藤原 妹紅のことが好きです。俺と…付き合ってくれませんか?」

『っ!?』

『……っばかぁ…ずりぃよ…なんで今言うんだよ……』

泣きじゃくる妹紅を優しく撫でる

「返事を……聞かせてくれないか?」

『…好き……私も恋斗が好き!!』

「ありがとう…」

『あっ』

そう言って俺は妹紅をぎゅっと抱きしめる

最初は驚いていたが少しして妹紅も抱きしめ返してくれる

「…なぁ」

『ん?』

しばらく抱きしめ合った後 俺はそっと彼女を離し

「キス…してもいいか?」

『えっ!?///んっ!!』

返事を聞く前に妹紅の唇に自分の唇を重ねる

『っ〜〜〜〜〜!!!///』

いきなりで驚いただろう彼女だが しだいに受け入れてくれる

「んっ……ふぅ…」

『…………ふぁ』

キスを終え お互い見つめ合う

『……本当に、私でいいの?』

「あぁ…」

『…ガサツな女だぞ?』

「あぁ…」

『色気なんてないぞ?』

「そんなの好きにならない理由にならないさ。俺は妹紅が好き……これだけじゃ足りない?」

『っ!!///いや…そんなことない……ありがと』

笑顔だった妹紅は何かを思い出したのか俯いてしまう

「ん?どうした?」

『……私、不老不死だから…だから…』

うまく言葉に出来ないのか 彼女は黙ってしまう

その言葉を聞いて 俺も彼女が不老不死であることを再認識する

しばらく考え 俺はこう言った

「確かにお前は不老不死だ。俺より長く生きるだろう…。でも俺は…一生お前を愛し、幸せにする!妹紅が退屈しない毎日を過ごせるようにしてやる!」

そして彼女を抱きしめる

『嬉しい…すっごい嬉しい!……がとぉ……ありがとぉ……っ…っ…』

彼女が落ち着くまで優しく頭を撫で続ける

しばらくすると妹紅も落ち着き 俺は

抱きしめていた彼女をゆっくりと離す

「もうこんな時間か……」

『あ……ほんとだ…』

「そろそろ…帰るわ」

『ん…』

「今日はありがとう!料理もケーキも美味しかったよ!」

『私の方こそ…リボンありがと!大切に使うね!!』

「それじゃあ、また明日…」

『う、うん!』

妹紅は背を向け帰ろうとする俺に声をかける

『な、なぁ!』

「ん?どうし…んっ!!」

振り返ったと同時に妹紅からキスをされた

「っ!!…なっ!」

『お休みなさいのキス!///』

妹紅は顔を赤くしながら笑みを浮かべる

「っ〜〜〜!!お、お休み!!」

照れ隠しに妹紅軽く抱きしめ 今度こそ帰る

帰り道 愛おしい彼女を絶対に幸せにすると 俺はそう心に誓うのであった